革新運動の大義を裏切った決議案

3、決議案における自衛隊政策の犯罪性(1)

 決議案の第3章は、「日本改革の提案――21世紀の未来はここにこそある」と題して、この間の日本改革論の主張を改めて全面的に展開している。これらの諸政策に対する批判はすでに、『さざ波通信』第13号をはじめ、すでに何度となく行なっているので、ここでは繰り返さない。
 ここでとくに取り上げたいのは、この第3章の9項で展開されている自衛隊政策と天皇政策である。まず最初に、自衛隊政策について取り上げる。その核心部分を以下に引用しよう。

 憲法9条は、国家の自衛権を否定してはいないが、「国権の発動たる戦争」「武力による威嚇」「武力の行使」を放棄するだけでなく、「陸海空軍その他の戦力を保持しない」として一切の常備軍をもつことを禁止している。ここまで恒久平和主義を徹底した憲法は世界にほとんど例がない。憲法9条は、戦争の違法化という20世紀の世界史の大きな流れのなかで、もっとも先駆的な到達点をしめした条項として、世界に誇るべきものである。
 その値打ちは、昨年、オランダのハーグでおこなわれた世界市民平和会議での「行動指針」が、各国議会に「憲法9条のように戦争放棄宣言を採択すること」をよびかけるなど、いま世界でも見直されつつある。それは21世紀にむけてわきおこりつつある平和と進歩の国際的な流れを反映している。21世紀は、軍事力による紛争の「解決」の時代でなく、“国際的な道理にたった外交”と“平和的な話し合い”が世界政治を動かす時代になる。この新しい世紀には、憲法9条の値打ちが、地球的規模で生きることになる。とりわけ平和と進歩の力強い潮流がわきおこりつつあるアジアでは、憲法9条の値打ちは、いよいよ生彩あるものとなるだろう。
 憲法9条にてらすならば、自衛隊が憲法違反の存在であることは、明らかである。世界でも有数の巨額の軍事費をのみこみ、最新鋭の現代兵器で武装した軍隊を、「戦力ではない自衛力」などといってごまかす解釈改憲は、もはや到底なりたたない。
 それでは、憲法9条と自衛隊の現実との矛盾をどう解決するか。わが党は、改憲派がとなえるような自衛隊の現実にあわせて9条をとりはらうという方向での「解決」ではなく、世界史的にも先駆的意義をもつ9条の完全実施にむけて、憲法違反の現実を改革していくことこそ、政治の責任であると考える。
 この矛盾を解消することは、一足飛びにはできない。憲法9条の完全実施への接近を、国民の合意を尊重しながら、段階的にすすめることが必要である。
――第1段階は、日米安保条約廃棄前の段階だが、ここでは、戦争法の発動や海外派兵の拡大など、9条のこれ以上の蹂躙を許さないことが、熱い焦点である。また世界でも軍縮の流れが当たり前になっている時代に、軍拡に終止符をうって軍縮に転じることも急務となっている。
――第2段階は、日米安保条約が廃棄され、日本が日米軍事同盟からぬけだした段階だが、安保廃棄についての国民的合意が達成されることと、自衛隊解消の国民的合意とはおのずから別個の問題である。この段階では、自衛隊の民主的改革――米軍との従属的な関係の解消、公務員としての政治的中立性の徹底、大幅軍縮などが課題になる。
――第3段階は、国民の合意で、憲法9条の完全実施――自衛隊解消にとりくむ段階である。独立・中立の日本は、非同盟・中立の流れに参加し、世界やアジアの国々と、対等・平等・互恵の友好関係をきずき、日本の中立の地位の国際的な保障の確立に努力する。また憲法の平和原則にたった道理ある平和外交で、世界とアジアに貢献する。この努力ともあいまって、アジアの平和的安定の情勢が成熟すること、それを背景にして憲法9条の完全実施についての国民的合意が成熟することを見定めながら、自衛隊解消にむかっての本格的な措置にとりくむ。
 独立・中立を宣言した日本が、諸外国とほんとうの友好関係をむすび、道理ある外交によって世界平和に貢献するならば、わが国が常備軍によらず安全を確保することが、21世紀には可能になるというのが、わが党の展望であり、目標である。
 自衛隊問題の段階的解決というこの方針は、憲法9条の完全実施への接近の過程では、自衛隊が憲法違反の存在であるという認識には変わりないが、これが一定期間存在することはさけられないという立場にたつということである。その時期に、必要にせまられた場合には、存在している自衛隊を、国民の安全のために活用することは当然である。

 以上の記述には多くの問題が含まれている。節を変えて、一つ一つ詳しく見ていきたい。

←前のページ もくじ 次のページ→

このページの先頭へ