「国民のみなさん」が「万が一でも大丈夫」だと思うまで自衛隊を存続させる(つまり半永久的に存続させる)ことをうたった以上、自衛隊活用論が出てくるのも、ある意味で当然と言える。だが、この「自衛隊活用論」は、「自衛隊の半永久的存続論」と相対的に区別して論じる必要がある。
まずもって、今回の大会決議案で、はじめて自衛隊の活用論が明記されたという事実を確認しておきたい。このことを確認するなら、ただちに問題になるのは、6月8日付『朝日新聞』で報道された不破委員長のインタビューである。
このインタビューのなかで不破委員長は何と言っていたか。朝日の記事を改めて引用しよう。
共産党の不破哲三委員長は7日までに、同党が将来政権入りした場合、当面は自衛隊を存続させ、有事の際には「自衛隊を使っても構わない」と語り、自衛隊解散を求める党の綱領に短期的にこだわらない姿勢を示した。
この発言は、まだ今回の決議案が採択されてもいなければ、発表さえされていない段階でのものである。現行規約の第21条には次のように書いてある。
全党の行動を統一するには、国際的・全国的性質の問題について、中央機関の意見に反して、下級組織とその構成員は、勝手にその意見を発表したり、決議してはならない。
規約改定案に対する論文ですでに述べたように、党の最高の機関である党大会に対しては、党の委員長を含めてすべて「下級組織とその構成員」である。そしてこの規約で言う「中央機関の意見」の最高のものは当然ながら党大会決定である。そしてこの党大会決定は何と言っているか? 第20回党大会の該当個所をもう一度引用しよう。
わが国が独立・中立の道をすすみだしたさいの日本の安全保障は、中立日本の主権の侵害を許さない政府の確固とした姿勢と、それをささえる国民的団結を基礎に、急迫不正の主権侵害にたいしては、警察力や自主的自警組織など憲法9条と矛盾しない自衛措置をとることが基本である。憲法9条に記されたあらゆる戦力の放棄は、綱領が明記しているようにわが党がめざす社会主義・共産主義の理想を合致したものである
この部分は第21回大会決定でもわざわざ引用された上で肯定されている。つまり、「中央機関の意見」とは、急迫不正の主権侵害に対しては「警察力や自主的自警組織など憲法9条と矛盾しない自衛措置をとること」である。
つまり、「下級組織とその構成員」である不破委員長は、委員長としての名において、「中央機関の意見に反して」、「勝手にその意見を発表」したということになる。明らかに規約第21条違反である。党の委員長が自ら公然と党の規約を蹂躙した。しかも、党の最も重要な基本政策を蹂躙する形で。われわれは、党規約にもとづいて、不破委員長の処分と解任を要求する。
この見解は、ここで初めて述べたものでもありません。
日本共産党は、1973年の第12回党大会で、「民主連合政府」の政策案を決定し発表したことがあります。その「自衛隊政策」の部分で、共産党としては、自衛隊が憲法違反であるという認識を明確にしているが、国民の合意をえて、自衛隊解散という措置に前進するためには、一連の段階が必要であること、したがって、民主連合政府の樹立後にも、かなりの期間、自衛隊が存在しつづけることを、明らかにしました。
さらに、「平和・中立日本」の安全保障政策の部分では、民主連合政府が、外国からの侵略をうけるようなことがあったときには、「可能なあらゆる手段」を使って、自衛の反撃をすることを明記しました。自衛隊が存在している段階では、この「あらゆる手段」には、自衛隊がふくまれることは、当然のことです。
このように、自衛隊の違憲性と将来の解散という方向を明確にしながら、民主連合政府のもとでも、国民の合意をえて解散という立場をとり、もし侵略をうけた場合には、自衛隊の「自衛機能」を活用するというのは、70年代以来、日本共産党が一貫してとってきた立場です。
この赤旗記事は、自衛隊活用論が1970年代以来のものであると主張している。われわれがすでに『さざ波通信』第13号の論文で詳細に明らかにしたように、第12回党大会決定のどこにも自衛隊活用論など書かれていないし、1998年に不破委員長がはじめて産経新聞インタビューで「自衛隊の自衛機能を使う」と発言するまで、そういうことが言われたことも、示唆されたことも一度もない。また、今回の決議案が発表されたとき、記者会見でも、その後のインタビューでも、党幹部たちは、この見解が70年代からのものであるとは言わなかった。それどころか、これが新しい見解であることを認めていた。
ということは、6月13日付『しんぶん赤旗』は、その紙面を使って、堂々と国民と党員を欺く大嘘をついたということになる。これは、現行規約第2条第6項「党にたいして誠実であり、事実をかくしたり、ゆがめたりしない」を蹂躙するものであり、「第9条
いちじるしく反社会的、反階級的で、党の純潔をけがす者は入党させることができない」にも抵触する。党の大会決定について大嘘をつき、党と人民を欺いたことは「いちじるしく反社会的で、反階級的」である。さらに、規約第65条は、規律違反として処分すべき党員について次のように述べている。
第2条の党員の義務をおこたり、党の統一を破壊し、決定にそむき、党をあざむき、また第3条の党員の権利をおかして、いちじるしく党と人民の利益に反する者は、規律違反として処分される。
赤旗記事は、「第2条の党員の義務をおこた」るものであり、党の正式の立場について嘘をつくことで「党の統一を破壊し」、党大会の「決定にそむき」、「党をあざむき」、「いちじるしく党と人民の利益に反」している。われわれは、この嘘記事を書かせた常任幹部会の処分と総辞職を要求する。