決議案の修正はすべてがすべて否定的なものであるわけではない。積極的な補強も存在する。それは何よりも、不安定雇用・未組織労働者問題についての補強がなされたことである。われわれは、前号の『さざ波通信』において、次のように指摘しておいた。
多くの青年労働者は、アルバイトやパート労働者、派遣労働者などの不安定雇用に就かざるをえない状況になっている。とりわけ、女性労働者は、若い層だけでなく、中高年層に至るまで、不安定雇用が主流になりつつあり、従来のM字型雇用すら実現できず、生涯にわたって不安定雇用を余儀なくされるという状況すら生まれつつある。労働運動分野における最も重要な課題の一つは、この不安定雇用問題である。これは21世紀の主流の働き方にさえなるだろう。にもかかわらず、決議案は、第3章の(7)「大企業中心から国民生活中心へ」の項目では、「不安定雇用」問題について何も論じておらず、(10)の「労働運動」の項目でもまったく言及していない。かろうじて、(8)項の「少子化」のところで一言言及されているだけである。
大量の未組織労働者の主たる部分は、中小零細企業労働者と不安定雇用労働者である。そしてそのどちらにおいても、青年と女性が多い。この分野こそ、社会変革の可能性を秘めた広大な領域である。パート労働者を組織化する試みは、一部の先進的組合(全労連系と全労協系の一部)ではすでに開始されている。しかし、全労連系の組合も含めて、日本の組合の主流は企業別組合であり、この企業別組合は、あいかわらずパート労働者の組織化に冷淡であり、しばしばパート労働者組織化の試みに公然と敵対する。こうした状況を意識的に克服しないかぎり、日本社会の変革はありえない。
この批判が念頭にあったのかどうか知らないが、修正された決議では、次のような文言が第3章(10)の労働運動の項目で補強されている。
大企業の首切り・リストラ、正規雇用からパート・アルバイトなどへの大規模な置き換えなどにより、未組織労働者が増大している。未組織労働者はもっとも過酷で劣悪な労働条件におかれており、その組織化をこれまでにまして重視する必要がある。
この補強は当然である。とはいえ、企業別組合の限界についてはまったく指摘されていないし、青年問題での項目では青年労働者の不安定雇用問題や組織化問題について補強されていない。また、「正規雇用からパート・アルバイトなどへの大規模な置き換え」という問題は、現在の労働・経済問題における最も重要な現象の一つであるにもかかわらず、わずかこの程度の補強ですまされている。さらにいえば、決議案の段階ではそもそも不安定雇用と未組織労働者の増大という重大問題についてまったく語られていなかったことは、実にゆゆしき問題である。これは現在の党指導部が、現場の労働実態についていかに無知であるかを、よく示している。