前号の『さざ波通信』において、われわれは、支部総会の成立条件に関する重要な規定が規約改定案では欠落していることを指摘し、この規約改定案が通ったら、総会が成立しなくなる支部が続出するのではないかと述べた。この批判を念頭においてか、不破結語はこの問題について次のように述べている。
つぎに、第十四条にかかわることですが、党会議の成立の条件をのべたところで、「支部総会は党員総数の過半数」とあります。この支部総会の成立の問題については、現行規約では、「党組織の努力にもかかわらず、一年以上党生活にくわわらず、かつ一年以上党費を納めない者は、党会議(総会)をひらくさい、その成立の基礎となる党員数からのぞくことができる」(現行第十一条)という規定があったのに、なぜ今度の規約からなくなったのか、このままだと現実に困ってしまうという意見がありました。
党のあり方としていいますと、活動に参加しない党員が、総会の成立要件にかかわるほど多いということは、普通の状態ではないのです。その普通の状態ではないことを、いかにもこれがあたりまえであるかのようにあつかって、その規定を規約に残すのはあまり健全なことではありませんから、今回の改定ではこれを省きました。
現実にそういう事態が生まれたときには、従来規定されていた通りの対応をすることを、いわば内規的な対応、あるいは規約の解釈として認めることにしたいと思います。
この説明も信じられないほど混乱している。規約として明示すべきことと、党の指導として実現すべき目標とが混同され、取り違えられている。総会の成立要件というものは、規約の明文に厳密に規定されるべき事柄である。サークル的なものを除けば、公的性格の強いどんな組織でも、総会の成立要件こそが規約で規定されるべき中心的事項の一つとなっている。ところが、この絶対に規約に明文化されなければならない事柄が、不破結語によると、単なる内規(そんなものはどこにもない)あるいは「規約の解釈」(書かれていないことをどう解釈するのか)として処理していいというのである。
他方、成立要件に関する規定が削除された理由として、「活動に参加しない党員が、総会の成立要件にかかわるほど多いということは、普通の状態ではないのです。その普通の状態ではないことを、いかにもこれがあたりまえであるかのようにあつかって、その規定を規約に残すのはあまり健全なことでは」ないということが挙げられている。もちろん、そのような状況は健全ではない。そのような不健全な状況はなくす必要がある。だが、それは、党の指導としてあるいは方針としてめざすべき目標であって、それを理由に総会の成立要件を規約で曖昧にしていいということにはならない。
そもそも規約というのは、さまざまな場合を予想して、どの場合でも規約にもとづいた運営が可能になるように整えておくべきものである。一般に法律や規則というものはそういう性格を持っている。不健全な場合だろうと、例外的な場合だろうと、そのような場合にルールにもとづいた対処ができるよう、明文的な規定を入れておかなければならない。たとえば、党規約には、党員が著しく反社会的行為を犯した場合の規定が書かれている。いやしくも党員たるものが著しく反社会的行為を起こすなどというのは、支部総会の成立問題よりもはるかに「不健全な事態」である。もし不破結語の言い分が正しければ、党員が反社会的行為を犯した場合の規定が規約に存在することは、このような「不健全な事態」を当然視していることになってしまうだろう。したがって、そのような規定は規約から削除しなければならないことになるだろう。
この問題での不破氏の説明が示しているのは、共産党指導部が、「明文的ルールによる運営」や「法による統治」ということについてまったく理解していないという深刻な事実である。