日本共産党と国労問題の総括

2、『しんぶん赤旗』記事の偏向報道

 続開大会の翌日の1月28日付『しんぶん赤旗』は、この大会の模様について、次のような報道を行なった。

 国鉄労働組合は二十七日、JR採用差別事件をめぐって昨年十月に休会となっていた第六十七回定期大会の続開大会を東京都内で開き、運動方針を賛成多数で採択しました。
 運動方針は、「JRに法的責任なし」を認めることという自公保三党と社民党の「四党合意」を前提としながらも、「当事者が満足のいく解決」や「公正な補償」を日本政府に求めているILO(国際労働機関)勧告に沿って、早期解決をはかるよう政府に申し入れるとしています。昨年七月の臨時大会以来、臨時続開大会、定期大会と四回目での方針決定です。
 また、代議員からの「全動労争議団、建交労、全労協、全労連をはじめ一致する要求と課題でたたかう多くの仲間との共闘を追求する」とした修正動議を受け入れ、補強しました。
 討論では、「野党三党にも協力を要請し、政治の力を結集して政府・JRに解決を求めるたたかいが重要だ」、「団結を回復し、解決水準を高めるたたかいを本格的に強める」との意見が相次ぎました。
 国労闘争団の特別代議員は、「ILO勧告で掲げられた公正な補償をかちとろう」が全国の闘争団の一致するスローガンだと紹介。解決交渉に闘争団代表も参加させることや大衆行動の強化を訴えました。
 宮坂義久書記長は、答弁で闘争団の要求であるJRへの採用、金銭的補償、雇用確保と正常な労資関係について、「確立を求めていく」と表明。「勧告の積極的部分(内容)に食らいついて、要求の前進をはかっていく」とのべました。

 この記事だけを読めば、あたかも国労続開大会が、いかなる混乱もなく開催され、参加者全員の固い支持のもとに、執行部の方針が採択されたかのようである。だが実際には、続開大会はこのような牧歌的なものではなかった。
 すでに、続開大会の数日前から、大会に機動隊の大規模な導入に行なわれるという情報がインターネットを通じて流れていたが、それはけっして根拠のない噂ではなかった。当日、まだ誰も大会会場に来ていない夜明け前の時点からすでに、警官隊が、会場となった社会民主党本部会館前の道路を封鎖し、進入路となる道路出入り口を固めはじめた。闘争団メンバーなどが大会会場前に到着しはじめた午前7時ごろにはすでに、鉄柵が道路前に設置され、機動隊が姿をあらわし始めた。やがて、大会前の道路を数百人の闘争団および支援者が取り囲み始めるころには、数百人の機動隊、私服警官、公安警察などが、鉄柵の向こうにずらっと立ち並び、また数十名の機動隊員が闘争団および支援者たちを後からも包囲した。さらに、公安警察とおぼしき連中は、鉄柵の向こうから、闘争団・支援者の面々をビデオで執拗に撮影し、繰り返し顔写真をとっていた。
 いったい、これらの機動隊、公安警察は何を守っているのか? 彼らが守っているのは、国会議事堂でもなければ、米軍基地でもなく、原発施設でもない。この数百名の機動隊、警官、公安は、あろうことか、かつては最も戦闘的な労働組合の一つとして名をとどろかせた国鉄労働組合(国労)の大会を守っているのである。そして、彼らは、いったい誰からこの大会を守っているのか? それは、右翼の街宣車でもなければ、武装グループでもなく、機動隊と警官が守っている組合の当の組合員たち、その支援者たちから、である。何というパラドキシカルな光景だろうか。機動隊と警官と公安警察は、解雇された当事者とその支援者たちから、その解雇者を守るはずの組合の大会を守っているのである。
 大会会場から排除された人々は、怒りに震えながらも、整然とシュプレヒコールのみで訴えるしかなかった。それは、数年ぶりとも言える大雪と極寒のなか、10時間近くも、断続的に続けられた。
 大会の会場周辺がこのような状況であったとすれば、会場内の状況も異常だった。反対派の組合員は傍聴席から排除され、マスコミでさえ、各社1人という厳格な規制のもとに置かれた。そして、機動隊の導入や闘争団の締め出しに対する怒りの声が、会場内に響き渡った。執行部方針は、「4党合意案」反対派代議員の反対意見とシュプレヒコールを押し切って、強行採決された。執行部方針に賛成した組合員たちですら、将来に対する不安を隠せなかった。それも当然である。「4党合意案」の承認は、いかなる意味でも、職場復帰やまともな和解金の獲得を保障するものではないからである。また、役員選挙をめぐっても紛糾があり、旧執行部が総辞職し、「4党合意案」推進派の高嶋新委員長が選出された。
 これが、『しんぶん赤旗』が牧歌的に描き出した続開大会の実像である。
 トピックスですでに指摘したように、一般マスコミですら、大会が機動隊に守られるという異常な状況の中で開催されたこと、会場内では、機動隊導入に対する批判があいついだこと、などをそれなりに報じていた。にもかかわらず、『しんぶん赤旗』だけが、こうした重要な問題について、何ら言及する必要はないとみなしたのである。これが、「真実を報道する」新聞だというのか? それはまさに、戦前の大政翼賛報道に匹敵する「偏向報道」である。

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