2月2日付『しんぶん赤旗』は、この続開大会に関する解説記事を出した。「常幹声明」でもなければ、無署名論文でもなく、また、正規の機関名による方針や決定でもない、イニシャルだけが入ったこのような「解説記事」だけで問題を処理しようとする姿勢は、ごく最近になって見られるようになったものである。おそらく、昨年8月の国労問題に関する解説記事が嚆矢ではないだろうか? この問題点についてはあとで論じるとして、解説記事について検討しよう。
解説記事はまず冒頭で次のように述べている。
国鉄労働組合は一月二十七日、JR採用差別問題の解決をめぐって昨年十月に休会となっていた第六十七回定期大会の続開大会を東京都内で開き、運動方針を賛成多数で採択しました。採択した運動方針は、何を決めたのか、そこにいたる経過と問題点を事実に即してみてみます。
「賛成多数」と簡単に言い切っているが、実際にどれぐらいの多数だったのかについては述べていない。トピックスにあるように、執行部方針に対する賛成は78、反対は40であり、3~4割もの反対があった。続けて、『しんぶん赤旗』解説記事は次のように述べている。
国労は、昨年九月の全組合員による「一票投票」で多数の組合員が、問題解決の入り口として自公保三党と社民党の「四党合意」はやむをえないとしました。これをうけて、十月の大会で、運動方針は採択できませんでしたが、「四党合意」を執行部が受諾したことを含む経過報告は承認しました。
まずこの解説は、わざわざ、昨年9月に行なわれた全組合員による「一票投票」について触れ、その「レファレンダム」で「多数の組合員が、問題解決の入り口として自公保三党と社民党の『四党合意』はやむをえないとしました」と傍観者的に述べている。このような言い方にはいくつかの重要な問題がある。
まず第一に、すでに述べたように、争議の問題は、当事者自身が決定するべき事柄であって、たとえ所属組合であっても、その組合の多数決で決められるべきものではない、という決定的な問題をこの記事は意識的に無視している。いくら大規模な争議であったとしても、争議当事者は普通、それらの人々の所属する組合の全構成員の数からすれば圧倒的に少数である(今回の場合も、闘争団メンバー全員を合わせても、全組合員の数%にすぎない)。組合員全員が解雇されたのならともかく、組合の全構成員からすればごく少数でしかない争議当事者の「自己の運命を決定する権利」は、何人からも侵害されてはならない。これは、労働組合の根本原則であるだけでなく、民主主義の基本原則である。少数民族の「自決権」を、多数民族を含めたレファレンダムで決定するのが、反動的なのと同じである。
第二に、全組合員投票なるものは、国労の規約にもない恣意的な手続きであり、内容面からだけでなく、手続き面からしても不当なものである。そのような根拠のない手続きにおいて、「4党合意やむなし」論が多数を占めたからといって、それが、いささかでも国労執行部の暴挙を正当化するものでないのは、まったく明らかである。全組合員投票は、国労執行部の反動的暴挙を覆い隠す「民主主義的」イチジクの葉でしかない。
第三に、この「全組合員投票」において、共産党員たちはどういう役割を果たしたのか? 執行部の方針と闘って、「4党合意」反対論が多数を占めるために奮闘したのか、それとも、事実上、執行部方針に従う方向で動いたのか、それとも、成り行きに任せたのか? 党中央は、党員が、執行部方針に反対する方向で投票するよう指導したのか? こうした主体的な問題をいっさい無視して、「多数の組合員が、問題解決の入り口として自公保三党と社民党の『四党合意』はやむをえないとしました」などと傍観者的に言い放つことは許されない。