さらに、『しんぶん赤旗』解説記事は次のように続けている。
今回採択した運動方針は、「JRに法的責任なし」とする「四党合意」受け入れを前提にしながらも、「当事者が満足のゆく解決」や「公正な補償」を日本政府にもとめているILO勧告に沿って、早期解決をはかるよう申し入れる、東京高裁の採用差別不当判決は最高裁で判断を公正に行わせるとしています。運動方針は、昨年七月の臨時大会、臨時続開大会、定期大会、今回の続開大会と四回目の大会での決定です。
これは、採用差別問題をはじめ切実な要求の実現をめざして、団結の方向を示したものといえましょう。
驚くべき総括である。昨年8月の解説記事において、「4党合意案」が不当なものであり、問題の解決を困難にするだけであると説明していたにもかかわらず(このこと自体は、今回の解説記事でもいちおう言及されている)、今回採択された運動方針が「『JRに法的責任なし』とする『四党合意』受け入れを前提にしながらも」などと、あたかもこのことが特に重大な問題ではないかのように言い放ち、さらには、この受け入れ方針を「採用差別問題をはじめ切実な要求の実現をめざして、団結の方向を示したものといえましょう」などと総括している! 「問題の解決を困難にするだけ」の「4党合意」受け入れを決定した方針が、どうして「団結の方向を示したもの」であると言えるのか? これほど支離滅裂な解説は、見たことがない。
二つに一つである。「4党合意案」が不当なものであり、解決をいっそう困難にするものならば、それの受け入れを前提にした今回の運動方針は不当であり、問題の解決を遠ざけ、労働者の団結をいっそう困難にする。逆に、「4党合意案」を受け入れた今回の運動方針が本当に「団結の方向を示した」ものなら、当然、「4党合意案」は問題の解決に役立つものであると認めなければならない。ところが解説記事は、一方で、「4党合意案」を不当で問題の解決をいっそう困難にするといいながら、今回の運動方針を是認し、「団結の方向を示したもの」だと絶賛しているのである。これを人は「二枚舌」と言う。
また、この解説記事はしきりに「ILO勧告」を持ち出し、それを錦の御旗にしているが、ここで解説記事が持ち出している「ILO勧告」は、国労側の言い分をほぼ認めている99年11月の第一次勧告ではなく、「4党合意案」の受け入れを争議解決の前提にしている昨年11月に出された第二次勧告のことである。この第二次勧告は不当なものであり、ILOの権威を失墜させるのに十分なものであったが、解説記事はそのような第二次勧告の不当性に完全に口をつぐんでいる。国労だろうが、日本政府だろうが、ILOだろうが、その他どんな「権威」ある機関であろうが、争議当事者の自己決定権を否定することはできない。