日本共産党指導部が、テロ問題をめぐって国連の軍事行動を容認したことと、現状日本の主権確保に武力行使が必要とする立場に踏み入れたことは、日本共産党の右転落の道をたどる上で、昨年の自衛隊活用論とならんで、決定的な出来事である。この右転落は、私たち一般党員が、どれほど認めたくないものだとしても、現実である。
これまで、30数万の党員の統合力を保ちつづけるために、我が党指導部は、どんなデタラメであったとしても、過去との整合性についての説明を求められ、ときに詭弁を弄しながらもその説明責任に応えてきた。一般党員は、それがどのような見解であれ、信頼する指導部の説明であれば、その方針を「ストンと落とす」ための努力をしてきた。
しかし、今回の問題に関しては、我が党指導部は、ついに最小限の説明責任すら果たすことなく、事実上、クーデター的な手法で路線転換を行なった。6月28日付の「しんぶん赤旗」を見てほしい。これが、今回の海上保安庁法「改正」案に対する、事前に説明がなされた唯一の記録である。
不審船対応で「船体射撃」も/防衛庁が法案準備
2001.06.28「しんぶん赤旗」
防衛庁は二十七日、領域警備に関する法整備の基本方針をまとめました。今後、内閣官房や警察庁、海上保安庁と法案化作業を進めた上で、秋の臨時国会にも提出します。基本方針によると、「不審船への対応」に関して、「不審船を停船させるため、他に方法が ない時は合理的に必要とされる限度で『船体射撃』を行うことができる」ように法整備します。
この場合、結果として船舶の乗員に危害を加えた場合でも、自衛官が責任を問われないようにする方針です。この関連で、海上保安官も同様に「船体射撃」ができるようにするとしています。
また、治安出動の際の武器使用権限に関し、少人数の武装工作員への適用を可能にします。
よく見てほしい。この記事は、一般党員の目には、とくに違和感なく読めるだろう。それは党員にとって、「船体射撃」が違憲行為であることは自明であり、それを防衛庁が準備している危険性を報じることは当然だからである。
しかしこのときすでに指導部は、この法律に賛成する立場へと変質していたのである。この記事は、「反対しなかったコメント」という意味で、賛成するための既成事実、アリバイとして使われたのである。したがって、国会議員級の幹部や「しんぶん赤旗」編集部などの主要な党幹部たちでさえ、この法案に日本共産党が賛成するということを最後まで知ることができなかったのである。だから「しんぶん赤旗」紙上での表記が、「『改正』案」となったり「改定案」となるようなブレが生じたり、党本部書記局の幹部にとってさえ、賛成したことが「寝耳に水」となるような事態が生じたのである。
これまで、党の主張や行動に多少の不安や疑問を抱いてきた党員であっても、きっと復元力が発揮される、いずれよい方向にいずれ変化するはず、といった大局的な信頼によって、自己の党員としての存在を理解しようとしてきた人もいるかもしれない。しかし、私たちの指導部は、こうした私たちの政治的信頼を踏みにじり真っ向から裏切った。私たち一般党員は、指導部にとって、新路線に追従・適合させていくための対象でしかないのである。この事実を、いま勇気をもって認識することが必要だ。この党を改革していくことは、現在の私たち党員に課せられた歴史的な責任であるということを自覚するべき時ではないだろうか。