テロ・報復戦争・戦争協力問題トピックス

(01.10.18)安保体制下での「主権侵害に対抗」とは

 16日の衆院テロ防止特別委員会で突如として賛成に回ったのにつづき、18日の本会議でも日本共産党は海上保安庁法「改正」案に賛成した。
 本日衆院本会議で採決された3法案(テロ対策特措法、自衛隊法「改正」案、海上保安庁法「改正」案)は、アメリカの「報復戦争」への参加を「口実」に、戦争や軍事行動ができる日本をつくり、安保体制を飛躍的に強化するための一連の法案である。これらの法律は、日本が戦争のできる「普通の国」となるためのきわめて重要な布石であり、どれひとつとして認められないものである。
 そもそも日本共産党は、これらの法案審議のための委員会の設置に厳しく反対の態度を表明してきた。児玉健次議員は、4日の衆院議院運営委員会理事会で「政府が提出しようとしている法案には、反対であり、提出すべきでない」(10月6日付「しんぶん赤旗」)と述べ、特別委員会設置後の5日の「しんぶん赤旗」も、10日の「しんぶん赤旗」も、11日の「しんぶん赤旗」もすべて海上保安庁法「改正」案というカギ括弧つきで表記している。にもかかわらず、いかなる説明もなく、採決の日に賛成にまわったのである。まず、このこと自体が党員や支持者を愚弄するものであると言わなければならない。
 ようやく今日になって「しんぶん赤旗」が「海上保安庁法改正案─主権侵害に対抗する警察力の強化は必要」と題した記事で、海上保安庁法「改正」案に賛成した理由を示している。

 いわゆる「不審船」などによる領海侵犯などがあった場合、軍隊である自衛隊ではなく、第一義的には警察力で主権の侵害を守るのというのが、日本共産党の考えです。
 その海上保安庁の能力に問題があれば、きちんとした機能強化が求められます。たとえば、海上保安庁の巡視船の速度が遅くて「不審船」などに追いつけない状態では困りますから、巡視船の高速化、大型化が必要です。
 また現行法では、法令違反などの疑いがあり、停船命令を出しても従わず、逃走する「不審船」を停船させる手段として武器の使用を認めています。このとき威嚇射撃はできますが、人に危害を与える恐れのある、直接船体に射撃することは許されていません。
 今回の改正では、当該船舶が法令違反などの疑いがあり、かつ停船命令を出しても抵抗・逃亡しようとする場合に、最終手段として、人に危害を与えても罪に問われない「危害射撃」を認める要件を定めるものです。
 日本共産党は、「不審船」に対する立ち入り検査などは必要なものであり、停船命令に従わずに逃亡する場合には、危害射撃によって逃亡を阻止することが必要との立場から、今回の法改正に賛成したものです。
 こうした危害射撃は、実際の運用では慎重さが求められることはいうまでもありません。
 なお今回の自衛隊法改悪法案で、自衛隊に海上保安庁と同様の権限を与える規定をもりこんでいましたが、日本共産党はこれには反対しました。 (18日付「しんぶん赤旗」)

 これは少しも説明になっていない。
 「警察力で主権の侵害を守る」という意味の通じない日本語は別にしても、「主権の侵害」に対抗することイコール武力行使ではない。領海侵犯があれば、領海からの排除だけではなぜいけないのか? 立ち入り検査が絶対に必要なのか? 逃亡したら「不審船」に追いつかなければならないのか? しかも、武力を使ってでも止めなければならないのか? そうした基本的説明がまったくなされていない。
 この法案ではっきりしていることは、たとえ「不審船」が武力行為を行なわなくても、逃亡を阻止するという理由だけで武力攻撃(危害射撃)ができるということであり、こともあろうに共産党の国会議員団や党中央がその必要性を認めているということである。これは、一昨年の「不審船」事件において、「十分に武器の使用ができないという法律上の制約があり、不審船に逃走を許した」と発言した当時の野呂田防衛庁長官とまったく同じ立場である。
 これまで軽軽しく武器の使用ができなかったのは、単に「法律上の制約」であっただけではなく、憲法九条の平和主義という制約があったからである。支配層が狙う改憲攻撃、有事法制の整備に断固たたかわなければならない党国会議員団と党中央がこのような裏切り行為を行なったことに対し、われわれは厳しく糾弾するものである。(K・M&T・T編集部員)

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