「4党合意」を受け入れ屈服を続けている国鉄労働組合(国労)の問題で、共産党が路線転換したとの情報がネットなどで報じられている。資料としては、党の関係労働組合支部長会議の聞き取り「メモ」や「別紙」、会議の「レジュメ」といった文書が「がんばれ国労闘争団」のHPに掲載されている。われわれはこれらの文書の真贋について最終的に判断することはできないが、すでに関係者にとって路線転換は事実であるし、内容を読むかぎり、単なるでっちあげとはとうてい思えないリアルさがある。そこで、本稿ではこれらの資料がおおむね事実にのっとったものとして論じたい。
さて、資料のうちの「メモ」によれば、「日本共産党中央委員会は、2002年7月18日とその後の2回に分けて、国鉄闘争との関わりをもつ全国30都道府県の労働組合部長会議を開催」し、その中で「従来の『4党合意』依存路線では解決しないとの立場を鮮明」にし、党として「労働組合運動の原点に立った路線の確立」をめざして「奮闘していくことを確認した」とある。
また「別紙」によると、確認された方針は、中央労働局によって国労内の党グループに報告、説明された。また、「国労方針の推進に深く関わってきて、反対派と長く対立」してきたため「状況は単純ではない」が、「グループにも党の提起の方向に対する『反対意見』はない」とされ、「都道府県レベルを通して、それ以下の関係組織には徹底をはかる取り組みが行なわれている」といった党内状況まで書かれている。
まず第一に、今回の国労における党の路線転換は、われわれが2年前から主張してきたところであり歓迎する。『さざ波通信』第14号の論文「岐路に立つ国鉄闘争――共産党中央は「4党合意」の拒否を明確にせよ!」(S・T)のむすびでわれわれは次のように述べた。それは今日でも有効である。
国労内の力関係を決定するうえで、したがってまた、国鉄闘争の命運を決定するうえで、今や共産党中央がどのような姿勢や指導方針をとるのかが、事態を左右する決定的な重要性を帯びている。臨時大会はいずれ再開されるだろう。そのときに、党員が一丸になって「4党合意」に反対するならば、全面屈服という最悪の結末を避けることができる。今こそ、「4党合意」反対の旗幟を党として鮮明にすべきときである。
第二に、今回の路線転換は、実践的には「4党合意」をめぐるまさしく180度の方向転換である。「メモ」が認めているように、国労革新同志会(革同)に結集する党員の多くは「4党合意」受諾の「国労方針の推進に深く関わって」きた。それゆえ、方向転換にはそれなりのけじめが必要であろう。国労革同内のことはさておくとしても、党中央は少なくとも労働局の責任者ないし担当者を更迭すべきである。
第三に、日本の労働運動における国鉄闘争の重要な位置から、党中央は、党内の関係者だけの説明にとどまらず、『しんぶん赤旗』を通じて公式に説明すべきである。労働運動における国鉄闘争の意義もさることながら、党中央はこの問題についてこれまで『しんぶん赤旗』で論文や記事を掲載してきた経緯もある。労働者・支持者は党中央からの誠実な説明を求めている。党中央は説明責任を果たすべきだ。
最後に、党の路線転換の意義は、なによりも「4党合意」を拒否して闘ってきた闘争団と支援者・支援団体の勝利だということである。共産党が一致して反対派に回れば、賛成派と反対派の力関係は変わり、逆転させる可能性も出てくる。現に、国労本部によって訴訟取り下げや反対派の統制処分が企てられた今年の定期大会は8月開催の予定であったが、いまなお開催のめどが立っていない。また、8月に検討された反対派に対する統制処分の決定もできなかった。それどころか代議員選挙結果によっては「4党合意」が否決される可能性もありうる状況だと関係者はみている(たとえば、「がんばれ国労闘争団」と「国鉄闘争共闘会議」のHPに掲載されている国労仙台闘争団の佐藤昭一氏の論文参照)。
もちろん、今回の党の路線転換が国労全体の路線転換を自動的にもたらすわけではない。国労本部のHPに掲載されている「共同通信ニュース」によれば、国労本部は今なお、反対派に訴訟の取り下げを要請している(ただし、「4党合意」推進の努力が実をむすばなくとも、11月に定期大会を開催する方向のようである)。予断は許されないが、闘う闘争団に連帯し「4党合意」反対派勝利のために、関係党員が誠実に努力し奮闘されるよう、また闘争団・反対派への広範な支援を結集するよう「さざ波通信」編集部として訴えたい。