(2002.9.17)日朝首脳会談開催――北朝鮮首脳が日本人拉致を認める
9月17日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌にて、日本の小泉首相と北朝鮮の金正日総書記による初めての日朝首脳会談が行なわれ、共同宣言が結ばれ、10月から国交正常化交渉が再開されることが確認された。この会談については多面的な検討が必要であるが、ここではとりあえず、この会談の中で、北朝鮮側が初めて同国の国家機関による日本人拉致の事実を認めたことについて一言述べたい。
報道によると、拉致された人々のうちすでに8人が死亡し、生存が5名であることが北朝鮮側から明らかにされた。金総書記は会談の場で謝罪の言葉を口にし、2度と起こらないようにすると述べたが、加害者が誰なのか、拉致の詳しい状況、被害者の詳しい情報などについてはまったく明らかにされていない。これは「国益」の問題ではなく、人権の問題である。この問題をめぐる国家間の処理がどのように行なわれるのであれ、われわれはまず何よりも、北朝鮮独裁国家が行なったこの破廉恥きわまりない犯罪を断固糾弾するとともに、その真相の全容を明らかにすることを要求する。
日本国家および日本軍が戦前に朝鮮半島で行なった犯罪の規模とひどさはもちろん、北朝鮮特務機関による日本人拉致よりも何百倍、何千倍も深刻である。日本人拉致問題のキャンペーンを行なっているメディアや評論家や政治家たちが、他方で、戦前の日本が朝鮮半島に対して行なった犯罪については軽視ないし無視し、従軍慰安婦問題については、その存在すら否定するキャンペーンをやっていることは、絶対に許されないダブルスタンダードである。われわれはこのような立場にいっさい与しない。しかしながら、戦前の日本による犯罪がいかにひどいものであろうと、戦後における北朝鮮の特務機関による日本人拉致がいささかでも正当化されるわけではない。
スターリン時代のソ連も、外国での誘拐・暗殺にたびたび手を染めてきたが、北朝鮮による今回の犯罪もまた、この独裁政権の反人民的・反革命的本質を如実に示している。北朝鮮に対するあらゆる軍事的脅迫にわれわれは反対するが、それと同時に、北朝鮮独裁政権の反動的性格にいかなる甘い評価も下してはならない。
日本共産党の志位委員長は9月12日の「CS放送朝日ニュースター」のインタビューの中で、朝鮮総連の場合と同じく、朝鮮労働党との間の関係も改善可能であるとの立場を表明している。しかし、朝鮮人民を残酷に抑圧し、国際規模で国家的犯罪を繰り返してきた政党と、これまでの論争問題さえ解決すれば、友好的な関係を築くことができるのだろうか? 国と国との関係においては、反動的国家とも国交を持つ必要がある。だが政党としては、どの国家、どの政党に対しても独自の判断基準を持たなければならない。自分たちの党に敵対しないかぎり友好的関係を持つというような態度は許されない。(S・T編集部員)