綱領改定案は、戦後社会の3つ目の変化として、半封建的社会関係の解体を挙げている。
「第三は、戦前、天皇制の専制政治とともに、日本社会の半封建的な性格の根深い根源となっていた半封建的な地主制度が、農地改革によって、基本的に解体されたことである。このことは、日本独占資本主義に、その発展のより近代的な条件を与え、戦後の急成長を促進する要因の一つとなった。
日本は、これらの条件のもとで、世界の独占資本主義国の一つとして、大きな経済的発展へと進んだ。しかし、経済的な高成長にもかかわらず、アメリカにたいする従属的な同盟という対米関係の基本は変わらなかった」。
以上の記述は、一見したところそれほど問題がないかのように見えるが、実際にはそうではない。
まず第一に、ここでも、この半封建的社会関係の解体がどのような政治状況のもとで、どのような階級的諸関係のもとで行われたのかについて何も書かれていない。現行綱領では、すでに述べたように、世界と日本の人民の圧力、およびアメリカ帝国主義による対日支配に必要な範囲での民主化、という具体的脈絡が明らかにされていた。
第二に、さらに重要なことは、現行綱領では、この半封建的社会関係の解体と日本独占資本の復活強化とが結びつけて論じられていることである。
「農地改革によって半封建的・地主的土地所有が農地の面では基本的に解体されたため、日本独占資本が反動勢力の中心となったが、日本独占資本は、民主主義革命をざせつさせ、その支配を維持するために、民族の利益を裏切って、アメリカ帝国主義のしめす方向に忠実にしたがった」。
綱領改定案ではそのような関連が記述されておらず、ただ戦後の独占資本主義の発展の条件として半封建的社会関係の解体について触れられているだけである。現行綱領では、アメリカ帝国主義による日本独占資本の復活政策が戦後社会の変化を論じるうえで要の位置にあったが(「アメリカ帝国主義は、……日本独占資本を目したの同盟者として復活させる政策をすすめ、日本人民の解放闘争を弾圧した」)、綱領改定案では、独占資本の復活についてそもそも何も語られていない。
戦争の敗北と戦後の極度の混乱、下からの嵐のような革命運動・労働運動の発展によって、日本独占資本は危機的状況に陥った。また、当初、GHQは日本が二度と対米戦争をしうる力を持てないようするため独占企業体をより徹底的に解体することを予定していた。しかし、下からの民主主義革命運動(それは、社会主義・共産主義勢力によって指導されていたため必然的に社会主義的性格を帯びつつあった)に対する恐怖と、国際情勢の根本的転換(中国革命の発展、朝鮮半島の分断、冷戦の開始など)を契機として、アメリカ帝国主義は日本独占資本に対する政策を根本的に転換した。占領軍としてのアメリカ帝国主義は、レッドパージ、下山・三鷹・松川事件などの謀略事件、さまざまな弾圧立法の制定と戦後の民主的法律の改悪などの強圧的手段を通じて、日本独占資本を救い出し、逆にその復活強化の道に乗り出したのである。これこそ、日本の従属国化などと並んで、戦後社会の階級関係を理解する上で決定的な位置を占めなければならないはずである。
しかし、戦後社会の変化を歴史的背景や過程と切り離して平板に列挙する綱領改定案においては、アメリカ帝国主義による日本独占資本の復活という最も重要な側面が無視されてしまっているのである。
全体として、この戦後の社会変化を扱った部分では、アメリカ帝国主義が果たした最も主導的・中心的役割が一貫して軽視ないし無視されている。綱領改定案を読んでいると、戦後日本を支配したアメリカ帝国主義がやった悪いことはただ、日本を従属国化したことだけであるかのような印象さえ受ける。「従属国化」については異常なまでに強調しながら、戦後改革のそれ以外の問題や限界について口をつぐむという綱領改定案の記述の仕方は、まさに「従属国」からの脱却を「最大の国民的課題」とする不破の信念にもとづいたものであろう。