次に、綱領改定案はアメリカの対日支配の実態と日本の軍事・外交活動について論じている。この部分にも現行綱領と異なる多くの表現が入っているが、最も重要なのは、自衛隊の性格規定を行なっている部分である。まず現行綱領の表現を見てみよう。
「日本の自衛隊は、事実上アメリカ軍隊の掌握と指揮のもとにおかれており、日本独占資本の支配の道具であるとともに、アメリカの世界戦略の一翼をになわされ、海外派兵とその拡大がたくらまれている」(強調引用者)。この叙述は綱領改定案では次のように書き換えられている。
「日本の自衛隊は、事実上アメリカ軍の掌握と指揮のもとにおかれており、アメリカの世界戦略の一翼を担わされている」。
一読して明らかなように、綱領改定案では「日本独占資本の支配の道具」という現行綱領の階級的規定が削除されている。これはもちろん偶然ではない。それは、日本独占資本という階級的主体概念を否定しているという理由からだけではなく、自衛隊というものを、アメリカとの関係でのみ規定し、国内における支配関係から自立した階級的に中立的なものとみなしているからである。自衛隊の問題性はただ、「アメリカ軍の掌握と指揮のもとにおかれており、アメリカの世界戦略の一翼を担わされている」ことだけである。したがって、安保条約を廃棄して、日本の「独立」が達成された暁には、自衛隊は真に国を守る軍隊になりうるし、民主連合政権によって「活用」可能な存在になる、というわけである(なお、自衛隊解消のプログラムなるものについては、綱領改定案の第4章を検討するときに批判する予定である)。
不破は、自衛隊に関して「日本独占資本の支配の道具」という階級的規定を削除したことについて綱領改定報告の中で一言も説明していない。このような重大な変更について何も説明されないというのは、驚くべきことではないだろうか。
さらに、軍備拡張や憲法改悪や自衛隊の海外派兵の策動に関する記述にも重要な変化が見られる。現行綱領では当該部分はこうなっている。
「アメリカ帝国主義と日本独占資本は、憲法の平和的民主的諸条項をふみにじってつくられた再軍備の既成事実を合法化し、自衛隊の増強をすすめ、これをアメリカの軍事戦略にくみこむ海外派兵と日米共同作戦の体制を強化し、そのために憲法改悪をくわだて、軍国主義の復活と政治的反動をつよめている」。
ところが、綱領改定案では次のようになっている。
「軍事面でも、日本政府は、アメリカの戦争計画の一翼を担いながら、自衛隊の海外派兵の範囲と水準を一歩一歩拡大し、海外派兵を既成事実化するとともに、それをテコに有事立法や集団的自衛権行使への踏み込み、憲法改悪など、軍国主義復活の動きを推進する方向に立っている」。
つまり、現行綱領では、再軍備や自衛隊の増強や海外派兵や憲法改悪を進めている主体は「アメリカ帝国主義と日本独占資本」であるとされているのが、綱領改定案では、そうした階級的主体概念が姿を消して、「日本政府」の単なる政策としてのみ説かれている。