綱領改定案と日本共産党の歴史的転換(下)

39、社会主義的変革の内容(2)――労働者国家の国際的課題

 先に引用した部分の中で、綱領改定案で削除されているもう一つの概念は、「社会主義的計画経済」であるが、この問題については、もう少し後の部分でより詳しく論じることにしよう。
 さらに削除されているのは、現行綱領にある労働者権力のなすべき国際的諸課題(「民族自決権の擁護・核兵器廃絶を中心とする世界平和への積極的貢献」)である。これは、綱領改定案ではまるまる削除されている。これらの課題を過渡期国家の国際的課題として考えるならば、現行綱領にある記述は当然の進歩的なものであるといえよう。それどころか、この部分に関しては、いっそう大幅な拡充が必要だろう。
 たとえば、発達した資本主義国から社会主義に進んだ国である日本として、遅れた経済水準から出発してさまざまな困難に苦しんでいる革命キューバやベトナムへの支援を行なわなければならない。社会主義日本(社会主義への過渡期にある日本)は、そのもてる豊富な資源と影響力を利用して、帝国主義の国際的な侵略行動に反対し、世界中の民主主義運動、反戦運動、環境保護運動などとの連帯、それへのしかるべき支援を行なうべきだろう。とりわけ、日本の革命的展望にとって最大の脅威であるアメリカ帝国主義との闘争においては、アメリカ国内の民主主義運動、革命運動との連帯が決定的な意味を持つだろう。さらには、新自由主義的グローバリゼーションとの国際的闘争に全面的な支援を行なわなければならない。一国社会主義の幻想を共有することなく、世界に帝国主義と資本主義が存在するかぎり、日本一国の平和も幸福も達成されないことを理解しなければならない。

 ※注 ところで、2001年1月に行なわれた中央党学校での不破の講義をまとめた『日本共産党綱領を読む』では、次のような一節がある。
 「綱領が日本での任務としているのは、『アメリカ帝国主義の支配の打破』であって、別に、アメリカ帝国主義を打倒するということではありません。アメリカ帝国主義といわれる勢力、この勢力を打倒する必要があるとすれば、それをやるのは、アメリカ国民の仕事であって、日本の国民や日本の革新勢力の任務ではないのです」(不破哲三『日本共産党綱領を読む』、新日本出版社、104頁)。
 たしかに、日本の革新勢力がアメリカ革命を代行することなどできるわけがない。にもかかわらず、「アメリカ国民の仕事であって、日本の国民や日本の革新勢力の任務ではない」と言うだけですますのは、大いに問題である。なぜなら、まず第一に、日本革命は、世界的な規模でのアメリカ帝国主義打倒の運動の一環だからであり、第二に、日本革命に対するアメリカ帝国主義の干渉が失敗するとすれば、それはただ、国際世論の圧力とならんで、アメリカ国内で強力な反帝国主義運動、連帯運動が起こる場合だけだからである。

 しかしながら、「生産手段の社会化」を中心においたと称する綱領改定案は、生産手段の社会化から直接生じる「効能」(!)以外の課題はほとんど無視されている。民主的改革の項ではあれこれの国際的課題が列挙されていたにもかかわらず、この社会主義・共産主義の章に来ると、突如として国際的課題は消え去り、国内的課題だけが語られるのである。これは、現行綱領と比べてさえ、綱領改定案がいっそう深く一国主義的立場に陥っていることを示している。
   ところで、綱領改定案に関する不破報告でも、「質問・意見に答える」でも、その他さまざまな機会での解説でも、この削除については何も説明されていない。現行綱領にある多くの重要な規定が説明もなしにこっそりと削除されているが、これもその一例である。

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