今回の6中総の第1章は「総選挙の結果」と題されて、各党の票および議席の消長が総括されている。しかし、この第1章を読んで驚かされるのは、ただ選挙結果として言及されているのが共産党自身と与党3党のみだということである。民主党についても、社民党についても、自由党についても、何らその選挙結果に言及されていない。いったいこれはどういうわけであろうか?
すでに、周知のように、今回の選挙で、野党が軒並み得票数も議席も大幅に増大させたのに対し、野党としてはひとり共産党だけが得票も議席も減らす結果になった。しかも、今回の6中総では、前回総選挙(4年前の96年総選挙)のときの得票数との比較しか示されていないが、98年参院選と比べるなら150万票もの得票減になっている。他の野党の得票と比べてこそ、そして、96年ではなく98年参院選と比べてこそ、今回の共産党の敗北の規模と意味も浮き彫りになるというのに、そのような最低限の事実認識上の手続きを6中総報告は放棄している。
科学的社会主義の党を標榜しながら、今回の敗北が示す数字上の現実すら直視することができないというのはどういうわけであろうか?
今回の共産党の敗北の意味を理解するには、他の野党の大幅前進を考慮に入れないわけにはいかない。そうした考慮なしには、いかなる科学的な分析も不可能である。すでに、号外第5号で明らかにしているように、今回の得票減の重要部分は、社民党と民主党に流れた。それが社民党と民主党の得票増にもつながっている。この票移動の原因はもちろん、謀略ビラだけではない。その主な原因は、この間の党指導部の右傾化路線である。
この間の『さざ波通信』への投稿の中で、今回の得票減のほとんどは無党派層であり、したがって、党の右傾化路線と無関係であると主張するものがあったが、その意見は一面的である。無党派層といっても一枚岩ではない。そこには、保守的無党派層、中間的無党派層、革新的無党派層という主として3つの層を区別することができる(ちなみに、それぞれの層も内部的に一枚岩ではなく、旧来からの無党派層と新しい無党派層という2つの基層を区別することができる。たとえば革新無党派層においては、伝統的に社共どちらの支持者ではないが、保守に対してあくまでも革新ないし左翼の側を選択してきた伝統的革新無党派部分と、かつては社会党支持者であったが、社会党の完全な右転落に失望して新たに革新無党派層になった部分とを区別することができる)。
謀略ビラによって影響を受けた主要な部分はおそらく、保守的無党派層と中間的無党派層の一部であろう。無党派層のいちばん重要な部分である革新無党派層はこのような謀略ビラによって影響を受けることはほとんどなかった。そして、この間の党指導部の右傾化路線にいちばん幻滅を感じたのは、他ならぬこの革新無党派層である。また、民主党への迎合路線(右傾化路線の一つの現われ)によって民主党との違いを浮きだたせることができず、このことは中間的無党派層を民主党に追いやる結果になった。
このように、無党派層が離れたという事実だけでは、けっして党指導部の右傾化路線の責任を免罪する根拠にはならない。もっとも、今回の選挙のように、選択の幅が著しく狭められているもとでは、現在の共産党の指導路線に大いに不満を感じながらも、「より小さな悪」として共産党を投票先に選んだ革新系有権者はかなり多かった。もし新社会党が比例区に立候補することができていたなら、もっと明白な形で共産党からの革新票離れが現象していただろう。