総選挙の表面的総括に終始した6中総

1、最初から路線問題を回避

 6中総決定の具体的な中身に入る前に、この6中総に対する党指導部の基本姿勢について見ておきたい。
 まず中央常任幹部会は、総選挙直後に出された6月26日付声明文において次のように述べていた。

反共謀略とのたたかいとともに、今回の選挙から教訓として学ぶべき問題を、党内外のみなさんのご意見にも耳を傾けながら、事実にもとづいて全面的に明らかにし、今後のたたかいに生かし、必ず捲土(けんど)重来を期す決意です。

 しかし、はたして、党指導部に、この声明文に書かれてあるような、今回の総選挙敗北をタブーなく全面的かつ誠実に検討する姿勢がそもそもあったのだろうか?
 この点に関して大いに疑問を抱かせるのは、6中総に先立って行なわれたいくつかの不破インタビューである。まず、7月3日に収録され6日に『しんぶん赤旗』に掲載された朝日ニュースターの不破インタビューを見てみよう。その中で、次のようなやりとりがなされている。

 小林 ズバリお聞きしますが、今度の不破さんのソフト路線というか、かなり連合政権下の安保政策とか、いろいろと理解が進んでいると思うのですが、今度は、要するにソフト戦略みたいなものが拒否されたというふうに受け止めていますか。
 不破 そうは思っていません。前にもいったことがあると思うのですけれど、選挙のあと、前回七百二十数万、それから参議院選挙で八百二十万、われわれは、この投票をした人たちすべてをとらえてはいないのですよ。つまり、私たちの活動の網の目で触れている人たちはわりあい堅い支持層ですが、それ以外の、いま共感して出てきている層というのは、われわれがなかなかつかめないでいる層なんです。そこを全部活動でとらえようということを四年前の選挙の後も提起したのですが、なかなかそこまで党の組織力がいかないわけですね。

 このように、インタビュアーが、党のこの間の路線について率直な質問をしているのに対し、不破委員長はいかなる根拠も挙げずに「そうは思っていません」と断言している。そして、ひたすら謀略ビラと支持者をつかみきれなかった組織力(路線問題と切りはなされた「組織力」問題については後述)に問題を収斂させている。
 同じ姿勢は、前日に行なわれた朝日ニュースターの不破インタビューでも見られる。その中では次のようなやりとりが行なわれている。

 梶本 もちろん謀略ビラについては、民主主義の立場から許されることじゃないということは重々承知しているんですが、しかし、これだけ負けたということは、党の路線、あるいは政策、体質ということも問題があったと見る方が、謀略ビラにやられたというよりは常識的なんじゃないかという印象なんですけれども、どうでしょうか。
 不破 われわれは、路線とか政策、体質に問題があるとは思っていません。謀略ビラというのは、「独裁政治の体質」だとか、「暴力革命の体質」だとか、言ってくるわけですよね。それにたいして、ビラをまかれてから、最後などはあと一日というときですからね。それにたいして、広範な人たちにそうじゃないんだよということをわかってもらう時間も活動もなかったというのが率直なところです。

 インタビュアーが今回の敗北に関して、党の路線・政策・体質を問題にしているのに対し、不破委員長はまたしても、いかなる根拠も出すこともなく、「われわれは、路線とか政策、体質に問題があるとは思っていません」と簡単に断言している。そう「思わない」のは自由だが、責任を問われている党の指導部自身がそう「思わない」からには、そしてそう断言するからには、なぜそう「思わない」のか、なぜそう断言できるのか、きちんとした説明が必要なはずである。しかし、不破委員長はそうした当然の「説明義務(アカウンタビリティ)」を何ら果たさず、ひたすら謀略ビラの否定的影響を繰り返すのみである。このような根拠なき否定こそが、かえって党の「体質」の問題性を浮き彫りにするものであることに、不破委員長はまったく気づいていない。
 私たち自身が号外第5号で明らかにしたように、今回の謀略ビラが共産党の得票減に一定の役割を果たしたことは疑いない。しかし、得票減をそれだけに還元できないこともまた明らかである。不破委員長の発言は、この点について何も語っていない。
 ただしインタビュアーの質問の仕方にも問題があったように思われる。この記者は、狛江市長選の結果を持ち出して「やっぱり謀略ビラでなく、党の主体の側に問題があったんじゃないかなと感じたんですけど」と述べ、また「反共ビラがあっても、謀略ビラがあっても、路線、体質、政策が正しければ…」と発言している。このどちらにおいても、インタビュアーはあくまでも謀略ビラの否定的影響はなかったという前提に立っている。そのため、謀略ビラの影響は実際にあったと延々と繰り返すことで反論できてしまう弱さがそこにはある。そうではなく、たしかに謀略ビラの影響もあったでしょうが、それだけで今回の敗北を説明することができるでしょうか、と尋ねていたなら、不破委員長は単に謀略ビラの否定的影響を繰り返すだけではない対応が求められたはずである。
 いずれにせよ、この不破インタビューで明らかなように、党の路線や政策や体質については最初から不問にするという前提で、6中総が開かれたことは明らかである。このような前提から、真に誠実な選挙総括など出てくるはずもない。次にその中身を具体的に見ていこう。

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