志位書記局長の6中総報告は続いて、「選挙総括の基本方向について」と題して、政策論戦上の問題と謀略ビラの問題について議論している。ここでは、まず政策論戦上の問題について取り上げたい。
まず志位書記局長は、選挙前に撒かれた政策パンフを取り上げ、その意義について大いに強調し、全党の確信とするよう訴えている。この政策パンフに対する私たちの批判はすでに、『さざ波通信』第12号の雑録論文-2の中で展開しておいたので、ここでは繰り返さない。重要なのは、その次に続く問題点の指摘である。
党中央が、はなはだ限定的・表面的な形とはいえ、自らの指導の弱点に言及するのはきわめて異例なことであり、したがって、詳しく論じるに値する。
志位書記局長は、「党の決定、方針にてらして政治論戦をふりかえってみたとき、いくつかの問題点がありました」と述べて、3つの問題点を指摘している。その第1が、消費税増税問題の打ち出しである。6中総報告は、消費税増税反対の政策を打ち出したことの意義を力説しつつ、その時機が遅れたことを次のように反省している。
同時に、この問題の本格的なうちだしが、衆議院解散以後になったため、国民全体に問題の焦点が十分に浸透しきれたとはいえなかったことも事実であります。
この反省は、実際に言われていることよりも、言われていないことのほうに、重要な意味がある。それはまず第1に、なぜ「この問題の本格的なうちだしが、衆議院解散以後になった」のか、である。事実関係として、消費税増税問題の打ち出しが衆院解散後になったことは語られているが、その遅れの原因については何ら分析されていない。これでは、反省の材料にしようがない。第2に言われていないのは、消費税増税反対の打ち出しとともに消費税減税要求の棚上げが行なわれ、減税要求は「無責任」だとする筆坂政策委員長の発言がなされたことである。第3に言われていないのは、選挙最終版になって急きょ打ち出された食料品非課税政策のことである。
なぜ消費税増税問題の打ち出しが遅れたのか? その理由は明白である。この問題は、民主党との間で先鋭な意見の相違を呼び起こすものであり、ぎりぎりまで民主党との連合政権路線にしがみつこうとした党指導部は、この問題をクローズアップさせるのを躊躇したのである。だが実際に衆院が解散され、選挙を戦う政策上の目玉を必要とした党指導部は、遅ればせながらこの問題を正面から取り上げることになった。
だが、よりいっそう問題なのは、消費税増税反対の打ち出しがなされると同時に、党指導部は消費税減税要求を財源問題を理由に大幅に先送りし、責任政党を強調し、こうして、消費税増税に反対する論拠をも自ら掘り崩してしまったことである。もし消費税5%を3%に引き下げることが現在の深刻な財政事情のもとでは不可能であり、無責任な要求ならば、消費税増税に反対することも無責任ではないのか? 財政再建がそんなに重要ならば、増税の苦い薬をどうして拒否することができるのか? 財政問題に一定の知識を持っている人ならば、当然こう考えるだろう。
すでに、『さざ波通信』第13号の雑録論文-1で明らかにしたように、消費税減税に必要な財源は4兆8000億円程度である。この程度の財源は、小渕内閣時代に行なわれた大企業・金持ち減税を元に戻すなどの、ごく初歩的な財政改革によって確保することができる。しかも、共産党自身、消費税減税こそが景気回復の決め手であると、この2年間、一貫して宣伝してきた。だとすれば、消費税減税による税収減のかなりの部分は、景気回復による税収増によってまかなわれるはずである。
にもかかわらず、つい最近まで基本政策として掲げていた消費税減税をあっさりと「無責任」と言いなして先送りしたことによって、消費税増税反対の主張をも信頼のおけないものにしてしまった。あれほど熱心に宣伝していた消費税減税をこうもあっさりと先送りする政党だとしたら、今の消費税増税反対も、いずれは当面やむなし論に転換するとも限らないではないか、このように鋭敏な有権者が考えたとしてもおかしくない。
さらに、消費税問題での共産党の二転三転を印象づけたのは、選挙最終版になって突然、食料品の非課税を打ち出したことである。この政策はもともと社会民主党の政策であった。社会民主党は消費税の5%へのアップを容認しつつ、有権者の反発を回避するため、食料品非課税の改善策を打ち出していた。共産党は、社民党のそうした政策を厳しく批判し、消費税減税こそ景気回復の決め手であり、食料品非課税という小手先の改革ではだめだと批判してきた。ところが、その共産党が、突然、選挙最終版になって、現在の5%水準を事実上受け入れるとともに食料品非課税策を打ち出したのである。これでは、右傾化した社民党の後を追ったにすぎない。しかも、ついちょっと前までは、今の財政事情では消費税減税は無責任だと言っておきながら、食料品非課税という減税策を出してくるのはいったいどういうわけか? 選挙前に突然減税政策を打ち出すのは、まさに無責任政党のおはこであるが、わが共産党はまさにそのような小手先の政策に飛びついたのである。
このような二転三転は、この問題での共産党の真面目さを疑わせるのに十分なものであった。このこともまた、消費税増税反対という「打ち出し」の説得力をも大いに掘り崩したことは、まったく明らかである。今回の志位報告は、こうした重要な諸問題についてまったく言及していない。