参院選を振り返って(座談会)

6、新社会党と社民党の惨敗の原因

司会 今回の選挙でもう一つショックだったのは、社民党と新社会党の惨敗です。とりわけ、新社会党は、共産党以上の後退を喫しました。政策的には共産党よりもはるかに首尾一貫したものであったにもかかわらず、どうして今回新社会党は惨敗したのでしょう?

 その理由は何よりも、その組織力と宣伝力と資金力の圧倒的弱さでしょう。私は選挙期間中、新社会党の宣伝カーに一度しか会いませんでしたし、法定ビラも入りませんでした。これでは、どんなに立派な政策を掲げていても、票を取ることができないでしょう。

 もう一つ重要なのは、新社会党が98年の参院選で議席をすべて失ったことです。国会に1議席でも持っていたら、選挙の時にはマスコミによってそれなりに取り上げられますが、ゼロ議席の場合は、事実上存在しない政党として扱われます。実際、選挙報道で新社会党が取り上げられた事例を私は知りません。98年の参院選で新社会党は90万票を少し越える得票を得ましたが、これは新社会党が議席をとるかもしれないという期待にもとづいて投じられたものです。しかし、98年の参院選では結局、1議席もとれなかった。参院比例区というのは、投票率にもよりますが、だいたい100万票とらないと1議席もとれないという非常に苛酷な最低得票水準になっています。新社会党が議席を失った時点で、いわば新社会党への投票が死票になる可能性が非常に高くなりました。投票の死票化を避けようとすれば、当然、議席をとる可能性のある別の革新政党に票が流れます。あるいは、他に適当な政党がないと判断されれば棄権に回るでしょう。おそらく、今回新社会党に投票したのは、共産党より左のコアな部分だけだったのではないでしょうか。
 興味深いのは、今回、新社会党が獲得した37万7000票というのは、95年の参院選で「平和・市民」が獲得した得票数とほぼ同じだということです。95年のときも「平和・市民」は約37万7000票獲得しました。この票数がおそらくは、共産党より左の党派および無党派層のコア部分なのでしょう。

 今回の非拘束式も、すでに少し話題になりましたが、有名人のいない小政党にとってはまことに不利に働いたと思います。たとえば自由連合は、たしかに1議席も獲得しませんでしたが、前回98年参院選の時よりもはるかに得票を増やしています。自由連合は、小政党とはいえ、潤沢な資金があり、コマーシャルも大量に打っていました。新社会党には、コマーシャルを出す資金力もありません。

 いずれにせよ、今回の惨敗で、今後いっそう同党の活動は困難になるでしょう。国会でたとえ1議席でも議席を持っていることがいかに重要なことであるかを、このことは示しています。それだけに、2000年の総選挙で、共産党が兵庫3区で候補者調整をして、新社会党の議席を確保していたならば、と悔やまれてなりません。

司会 なるほど。新社会党については、われわれは内部の事情もよく知らないし、今回の選挙の総括は同党においてそれなりに行なわれるでしょう。われわれとしては、ともに革新を目指す仲間として、新社会党の今後の再生と発展を願ってやみません。
 では社民党はどうでしょうか。こちらもかなり後退しました。

 はっきり言って、社民党は、共産党以上に、新自由主義政策に対する政治的・イデオロギー的備えができていませんでした。社民党は、日本の軍事大国化の路線に対しては小国主義的平和主義の立場から反対しますが、さまざまな規制緩和策や民営化路線に対しては、きわめて姿勢は弱く曖昧です。国会でも、労働基準法の改悪案をはじめとするさまざまな規制緩和政策に賛成してきました。さらに、民主党へのすりよりは路線は、共産党以上に露骨でした。だから社民党は、自民党が官僚的・利益政治的路線を正面に押し出しているときには(小渕、森時代)、共産党から離れた票の受け皿になるのですが、自民党が今回のように新自由主義路線を鮮明に打ち出したときには、まったく受け皿にならないのです。したがって、共産党から離れた票は行き場を失って棄権になってしまいます。そして、社民党自身、規制緩和策や不良債権処理に反対ではないのですから、とうてい小泉改革に対するオルタナティヴになりえません。今回における社民党の大敗北は、これまで社民党がとってきた「平和主義+新自由主義」という政策的組み合わせ(『週刊金曜日』や『朝日』と同じ)の破綻を示したものと言えます。
 もし社民党が出直しをするというのなら、共産党と同じく、これまでの誤った路線に対する明確な反省と転換が必要です。この2回の国政選挙で社民党は若干の得票増大を経てきましたが、これは、第1に、これまであまりにも減りすぎたので多少の同情票が集まったこと、第2に、共産党の急速な右傾化に危機感を覚えた層が社民党に少し戻ったこと、などによっています。だから、社民党のこの間の増大もかなりの程度は非常に曖昧で弱い流れにすぎなかったのです。

司会 そういえば、前号の『さざ波通信』では、「開き直りに終始する不破報告」という論文の中で、「もっとも、すでに昨年の総選挙でかなり票が共産党から戻ったので、社民党もこれまでどおり得票が増えると思ったら痛い目に会うだろう」と指摘されていましたね。これはある意味で、予想以上に当たったといえます。

 そうですね。まさに予想をはるかに越えて当たってしまいました。そしてこれは、革新陣営にとってけっして喜ぶべきことではなく、悲しむべきことなのです。革新陣営の本格的な立て直しに全力を注ぐべきでしょう。そのさい、日本の帝国主義化と階層分化という基本的な構造変化を正面に見据えて、日本の軍事大国化路線、ネオナショナリズム、権威主義的統治体制の強化、新自由主義改革といった支配層の基本諸政策の有機的結びつきを理解し、それらと根本から対決するという政治的基軸を確立することが必要です。
 その場合、今の路線に反対してどういう新しい社会をつくるのか、ということも、革新陣営の知恵を総結集して練り上げる必要があると思います。渡辺さんや後藤さんなんかは、「新福祉国家」というイメージを押し出していますが、「福祉国家」の伝統がない日本でこのようなスローガンがはたして一般大衆に受け入れられるかどうかまだ未知な部分が多い。方向性としてはそれでよくても、それをいかに国民の心をつかむような具体的なスローガンへと昇華させていくかは、まだまだこれからの課題だと思います。

 最初の発言で言いましたが、私は小泉改革に正面から対決して臨んだ今回の選挙は、それ自体としては誇るべきものであったと思います。このことをしっかりとふまえて、この戦いを本当に生かす形での総括が行なわれるべきだし、これからの闘いに向けた準備がなされるべきだと思います。
 

司会 わかりました。まだまだ論じるべき論点が多いように思いますが、今回はこれぐらいにしておきます。もうすぐ中央委員会総会が開かれて、都議選および参院選の総括がなされると思います。それに注目しましょう。

2001.8.2-5

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