総選挙の敗北は何を語るか――問われる指導部の責任

明らかになった時代認識の誤り

 今回の大幅後退は、党指導部のこの間の時代認識の誤りをもはっきりと示した。不破指導部は、基本的には社会党崩壊のおかげである95年以降の躍進に浮かれ、現代を、70年代初頭の革新高揚期を上回る新しい革新高揚期であるととらえた。
 たとえば『さざ波通信』第10号の5中総批判論文で取り上げた5中総中間発言の中で、不破委員長は90年代を振り返って、70年代との対比で次のように述べている。

 われわれの路線と社会が求めるものとの接近と合致、また、それをふまえての日本の社会の全分野におよぶような各階層との対話のひろがり、ここに、全党の活動できりひらいてきた大きな変化があるし、ここに日本共産党の新しい躍進的な発展への客観的な条件があると思います。われわれは以前にも、70年代に躍進の時期を経験しましたが、今日、わが党の躍進をささえ、またその背景になっているこれらの条件は、70年代の躍進の時期にはもたなかった厚みと深さがあるということを、私自身の実感としてのべておきたいと思います。

 不破委員長によれば、90年代の躍進は「70年代の躍進の時期にはもたなかった厚みと深さがある」ことになっている。その唯一の根拠は、選挙での共産党の得票数および率の増大であった。

 つまり、90年代は、7%台というわが党の最近の歴史のなかでも押し下げられた低い水準から出発しながら、後半の5年間で得票率でほぼ2倍になるところまで前進してきた、これが大づかみな経験です。70年代の躍進という時期にも、衆院選での得票率は、72年の一番躍進したときでも10・75%、全体として11%をこえたことはありませんでしたから、数字のうえでも、今日の躍進の厚みと広がりをみることができます。

 選挙での得票率だけを見て、「躍進の厚みと広がり」を結論づけるのは、私たちが『さざ波通信』第10号の5中総批判論文で指摘したように、まったくの議会主義的偏向である。だが、いずれにせよ、今回の選挙は、こうした幻想を完全に打ち砕いた。反共謀略ビラが大々的に撒かれただけで、2年前どころか、4年前の水準からさえ後退する「躍進」の「厚みと広がり」とはいったい何だろうか? 共産党指導部が、党の敗北の原因を「謀略ビラ」に求めれば求めるほど、これまで党指導部が繰り返し語ってきた、「70年代以上の広がりと厚みを持った革新高揚期」という時代認識の根本的誤りが暴露されるのである。
 私たちはすでに何度も指摘してきたように、現在は「第2の革新高揚期」では断じてなく、新しい水準での「反動攻勢期」である。したがって、選挙での一時的な得票増に浮かれて、まったく実力を越えた政権構想にふけったり、保守票を追い求めて舵を右に切ったりするのではなく、真剣に情勢の困難さを受けとめ、粘り強く下からの大衆運動と党建設に取り組み、党の民主主義化と刷新をはかり、社民党と新社会党と市民派左派、無党派革新を含む「護憲と革新のブロック」を構築し、自民党を中心とする保守ブロックと民主党を中心とする新自由主義ブロックに対抗する第3極の形成に努力すべきである。

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