政治的配慮と後退の産物
 ――2000年総選挙総括をめぐる渡辺治論文への批判

はじめに

 『月刊全労連』の2000年8月号に、一橋大学の社会学部教授である渡辺治氏の論文が巻頭に掲載されている。この論文は、今年の6月に行なわれた2000年総選挙の結果について、渡辺氏のこれまでの基本的見地にもとづきつつ分析したものである。
 私たちは、これまで、渡辺治氏の議論から大いに学び、そこから強い示唆を受けてきたが、しかし、今回の選挙総括論文はいただけない。現実の誠実な分析よりも共産党に対する政治的配慮があまりにも優先されているために、その選挙総括は鋭さを欠き、説得力のあまりないものになってしまっている。日本共産党指導部の現在の路線が、ここまで裏切り的になっているもとで、なおも党中央に対する政治的配慮を正しい現実分析より優先させるのは、政治的に誤っている。それは、良心的党員の目を曇らせ、批判的精神を麻痺させ、したがってまた共産党中央の誤った路線を今後も継続させるのに役立つだけである。
 私たちは、この論文において、渡辺論文を批判的に検討し、改めて、あの総選挙の結果について論じてみたい。

『さざ波通信』編集部

目  次

  1. なぜ安保・自衛隊は争点にならなかったのか?
  2. 新自由主義政策をめぐる争点の矮小化はなぜおきたか?
  3. 政権の枠組みをめぐる争点
  4. 共産党はなぜ後退したのか
  5. どこまで本音が語られた議論か?

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