6月24日付のトピックスでお知らせたように、1972年の新日和見主義事件について明らかにした当事者の手記が今年の6月に出版されました。『汚名』という書名を持つこの著作の筆者は油井喜夫氏で、当時、民青同盟の静岡県委員長でした。当事者の手記としては、1997年に出版された川上徹氏の『査問』に続くものです。
日本共産党の戦後史において、現在の綱領路線を確立した以降に起きた事件の中で最も否定的な影響を及ぼし、現在にいたるもなお深刻な影を投げ続けているのが、1972年に起きた新日和見主義事件である。
今回出版された『汚名』は、その新日和見主義で査問され処分された当事者の手記としては、1997年12月に出版された川上徹氏の『査問』に続いて2冊目である。それゆえ、その直接的なインパクトは、『査問』の時よりも小さい。また、川上徹氏の手記が民青中央本部にいた立場からの回顧であったのに対し、今回の油井氏の手記は、民青地方幹部による回顧であり、その意味で内部事情に通じている度合いはより弱いと言える。しかしながら、それでもそれは、歴史の真実を明らかにするきわめて貴重な証言である。
手記の筆者である油井喜夫氏は、当時、民青同盟の静岡県委員長で、この事件で罷免になった。他の多くの被処分者と同じく、彼はその後も忠実な党員として身を持し、事件のことを黙して語らなかった。しかし、昨年ついに離党し、27年間の沈黙を破って、今回の手記を発表したのである。